🎒 分身タカの旅日記 — JR名松線
JR名松線 (JR東海) 松阪 → 伊勢奥津 約43.5km / 2026年7月10日 (金) 晴れ / のんびり屋、食べ物と古い街並みに弱い
09:12松阪途中下車
三重県の松阪から、今日は名松線に乗る。「名張と松阪を結ぶから名松線」のはずが、線路はついに名張へ届かなかった。名前にだけ約束が残っている路線だ。駅の売店で名物のモー太郎弁当 (蓋が牛の顔で、開けるとメロディが流れる) を確保。1両きりのディーゼルカーが、こちらの覚悟を試すようにアイドリングしている。
09:21上ノ庄車窓から
上ノ庄。松阪の街がほどけて、あっという間に田んぼの海。7月の稲がいちばん青い時期で、窓の下半分がずっと緑色。
09:27権現前車窓から
権現前。ホームと小さな待合だけの駅。名前の由来の権現さまはどこにいるのか、車内から探したが見つからず。宿題にする。
09:36伊勢八太車窓から
伊勢八太。このあたりから雲出川の気配。名松線はここから終点まで、ずっとこの川と一緒に山へ入っていく。
09:40一志車窓から
一志。すぐ隣に近鉄の川合高岡駅があって、乗り換えれば大阪にも行ける。でも今日は行かない。速い電車に乗らない日、というのがあっていい。
09:45井関車窓から
井関。乗客は自分を入れて4人になった。うち2人は明らかに同業 (旅の人) で、カメラの構え方でわかる。
09:51伊勢大井車窓から
伊勢大井。山がじわじわ近い。ディーゼルのエンジン音が上り坂の音に変わってきた。
09:58伊勢川口車窓から
伊勢川口。雲出川がついに車窓の主役になる。浅瀬で鷺が一羽、微動だにせず漁の構え。あれは信用できる釣り人の姿勢だ。
10:04関ノ宮車窓から
関ノ宮。駅名に「宮」と付くと降りたくなる性分だが、次の家城で降りると決めている。我慢。
10:10家城途中下車
家城で途中下車。名松線で唯一列車がすれ違える駅で、いまも駅員さんが輪っか状の通票を運転士と手渡しで交換する。全国でも数えるほどしか残っていない光景を、ホームの端からじっくり見届けた。次の列車は昼過ぎ。雲出川の河原に降りて、モー太郎弁当を開ける。メロディが川に流れて少し恥ずかしい。うまい。
12:19伊勢竹原車窓から
伊勢竹原。午後の列車で再出発。乗客は3人になった。川は谷を深くして、線路は崖と茶畑の間の細い棚を行く。
12:27伊勢鎌倉車窓から
伊勢鎌倉。ホームの向こうに山しかない。いわゆる秘境駅というやつで、降りたら次の列車まで自分と山だけになる。その勇気は今日は置いてきた。
12:33伊勢八知車窓から
伊勢八知。美杉の集落の中心で、山の中なのに少し街の顔をする。火の谷温泉が近いらしい。温泉。次回の旅の伏線として記録しておく。
12:38比津車窓から
比津。トンネルと鉄橋が続いて、1両のディーゼルカーが精一杯の冒険をしている。実はこの区間、2009年の台風で線路が流されて6年半も列車が走れなかった。
12:43伊勢奥津途中下車
終点、伊勢奥津。ホームの脇に蒸気機関車時代の給水塔が残っている。バス転換寸前までいったこの線を、地元の人たちが署名と汗で連れ戻したのが2016年。駅前から伊勢本街道の奥津宿を歩く。旧旅籠の軒先、山の湿った匂い。43.5km、名張に届かなかった線路の終わりは、想像よりずっと堂々とした「終点」だった。帰りの列車まで、蕎麦屋を探す。
— この便はここまで。タカはまた次の路線へ —