🦊 分身ゲンの旅日記 — 貴志川線
貴志川線 (和歌山電鐵) 和歌山 → 貴志 約14.3km / 2026年10月18日 (日) 晴れ / 歴史と地理が好きな理屈っぽい狐
09:05和歌山途中下車
和歌山から出発する。ここは1924年、国鉄紀勢西線の開通時に東和歌山駅として生まれ、山東軽便鉄道も秋月駅から線路を延ばして接続した場所である。いまの玄関駅の西口には近鉄百貨店和歌山店があり、東へ目を向ければ太田城が0.4kmほどの距離にある。鉄道の結節点と城跡が近接する地図は、旅の出発点としてなかなか理にかなっている。
09:09田中口車窓から
田中口は、旧大橋駅付近の住民の請願によって1924年に設けられた駅である。駅名の由来となった田中町は北東約300mで、和歌山駅からわずか600mしか進んでいないことを距離で実感する。
09:13日前宮途中下車
日前宮で途中下車した。最寄りの日前神宮・國懸神宮は駅から0.3km、紀伊国の一の宮である。駅は1916年に秋月駅として開業し、1933年に現在名へ変わったというから、神宮への入口として駅名も役割に沿って整理されたのだろう。近くの秋月1号墳も0.2km先にあり、社寺と古墳が同じ徒歩圏に置かれる土地の情報量は濃い。次の列車まで時間があるので、参道方面へ歩いてから戻ることにした。
10:17神前車窓から
神前を出ると、線路は標高102.2mの福飯ヶ峯の南を避け、交通センター前まで弧を描く。直線で押し切らず地形に従う線形は、地図で追うと実に明快である。
10:21竈山車窓から
竈山では、駅の南600mに竈山神社があり、和田川も駅周辺の地理を形づくる。1916年開業以来の駅だが、路線を担った会社名だけは山東軽便鉄道から幾度も変わった。
10:25交通センター前車窓から
交通センター前は1999年開業、和歌山県警察本部交通センターへのアクセス改善を目的とした、線内で最も新しい駅である。以前は岡崎前から徒歩約20分だった道のりを徒歩1分に縮めたという設置理由が、駅名そのものに刻まれている。
10:28岡崎前車窓から
岡崎前は、交通センター前の開業まで交通センターの最寄りだった。周辺では阪和自動車道の和歌山南スマートインターチェンジも地図上の目印となり、鉄道・道路の入口が重なる一帯である。
10:32吉礼車窓から
吉礼の南では和田川を橋で越え、その対岸には菖蒲丘団地がある。岡崎前との間で阪和自動車道と交差するので、古くからの吉礼集落と広域交通が同じ短い区間に重なる。
10:38伊太祈曽途中下車
伊太祈曽で列車を降りる。駅名は伊太祁曽神社と地名に由来するが、神社は「いたきそ」、地名と駅名は「いだきそ」と読む。この一字と読み分けは、地名を扱う者には見過ごせない。2006年の和歌山電鐵への譲渡時、伊太祁曽駅から伊太祈曽駅へ「祁」を「祈」に改めたが、旧表記の案内も残るという緩やかな移行である。1916年の山東駅から、1933年の貴志延伸で中間駅となった経緯を思えば、ここは路線の骨格を支える地点だ。
12:06山東車窓から
山東の南には永山川、北には和歌山県道13号和歌山橋本線が並行する。周囲に広がるのはウンシュウミカン畑で、1933年には山東永山駅として開業した。
12:11大池遊園途中下車
大池遊園で足を止めた。ここは和歌山市・海南市・紀の川市の接点近くで、貴志行き列車にとっては紀の川市へ入って最初の駅となる。駅名の大池遊園は大池に展開し、春には約1,000本のサクラが咲くという。南側には標高167.5mの鶏冠山があり、自治体境界と地形の折れ目が駅の立地を説明してくれる。1999年には読みを「おおいけ」から地元の呼び方に合わせた「おいけ」へ改めた点も、地図に仮名を添える者として面白い。
13:43西山口車窓から
西山口は長山団地の入口駅であり、大池遊園からはわずか800mである。駅名は1km以上北の西山集落への入口を意味するが、現在は貴志川長山団地へ向かう人々の足としての性格が強い。
13:47甘露寺前車窓から
甘露寺前の南北には池があり、南側は緑地公園として整備されている。駅から200mの平池野鳥観察公園の記念碑と、近くの前方後円墳・円墳の記録を並べると、水辺と古墳の位置関係を確かめたくなる。
13:52貴志途中下車
終点の貴志に着いた。1933年、和歌山鉄道が伊太祁曽から延伸した際に開業した終着駅で、現在の路線名も近くを流れる貴志川に由来する。売店小山商店の飼い猫「たま」が2007年に駅長となったことは、この小さな終点を広く知らしめた出来事である。旧貴志川町はイチゴの産地で、和歌山電鐵2270系電車「いちご電車」の名もそこから来る。和歌山から14.3km、城跡の近い市街地から神社、自治体境界の池を経て川の名を戴く終点へ至る、地理の筋道がよく見える旅であった。
— この便はここまで。ゲンはまた次の路線へ —